Train Train
琥一×主(GS3)

 その日の電車は酷く込み合っていた。「ぎゅうぎゅう詰め」とはこういうことを言うのだろう。四方八方から加わる人の体の圧力は、週明け、月曜日の朝の陰鬱な心持ちに重なって、不快指数をどっと高めた。
 大きくくねった線路を進むさなかに、電車が大きく揺れた。
 平衡感覚を保てない者達が車体の揺れに合わせて危なっかしいステップを踏む。列車の連結路に近い場所にいた琥一の目の前の少女も、同様に右側へふらふらとよろめいた。
 危ねぇ、と声が零れる前に、琥一の手は彼女の腰に回された。琥一の腕に支えられ、彼女の体は何とかその場に留まった。
「ありがとう」
 彼女は気恥かしそうに琥一に礼を言った。
「オウ」
 琥一はぶっきらぼうに返答した。
「混んでるから気ィつけろ。……支えといてやる。掴まってろ」
「うん!ありがとう!」
 彼女は顔を輝かせて頷いた。
 その表情に、琥一は思わず目を逸らした。
 背丈の差を考えれば仕方ないのだが、これほど近距離で上目遣いに見上げられると、背中のあたりがくすぐったくてたまらない。

 昨晩、やっぱりヤっておけばよかった。
 後悔先に立たず。前日のことを今頃どうこう言ったってどうしようもないとは分かっているが、いいところまで進んだところで、その手を止めたことを、琥一は激しく悔んだ。
 普段なら、あんなところで止めはしない。止まるわけがない。好きな女が顔を真っ赤に染めて、煽情的な眼差しで自分の名前を呼ぶのなら、行くところまで突き進むのが男の性分というものだろう。
 しかし昨晩は、「事情」が違った。
 そもそもバイク通学が常の(校則云々はこの際無視するとする)琥一が、何故今日に限って、徒歩通学をしている彼女と一緒に電車に乗っているかと言うと、土曜日の夜から今朝にかけて、琥一は彼女を連れて祖母が住まう親戚の家に出かけていたのである。
 祖母宅は、はばたき市から電車で1時間半程行った、山間部に近いところにある。祖母宅から更に山の中に入ると小さな湖があり、雪融けの進むこの季節は、色とりどりの花の蕾が一斉に湖畔を彩って大変美しいのだ。
 前々から「恋人を連れてこい」としつこく言っていた祖母に折れる形で、琥一は彼女を連れて小旅行に出かけた。
 因みに、祖母が彼女のことを知るに至ったくだりは、琥一の弟の琉夏のお節介が深く関わっているのだが、それは思い出すのも嫌なのであえて割愛する。
 祖母は、琥一が彼女を連れてきたことに大喜びし、たいそう彼女を歓迎した。
 が、恋人とはいえ結婚前の、しかも高校生同士である琥一と彼女が同じ部屋で就寝するのを認めるはずはなく、二人はそれぞれ別の部屋で休んだ。
 小旅行で開放的な気分を楽しみつつも、親戚(主に祖母)の手前、琥一は否応なく禁欲生活を強いられることになった。できたのはせいぜい、人目を忍んで唇を重ねるとか、その程度であった。
 だから、頬を染め、潤んだ瞳で上目遣いに見上げられると、抑制に抑制を重ねた体が限界を突破しようとぞくぞくするのだ。口づけたくて、触れたくて、繋がりたくてたまらない。飛びかかりたい衝動を抑え込むため、琥一は大量の理性を投入し、彼女とは全く関係のないことを考えようと、少し離れた先にある窓を見やった。
 まだはばたき市からは遠いところにいるためか、海は見えなかった。代わりに、電車が山道を進んでいるため、深緑色をした木々の陰が時折光をはらんで揺らめいた。陽光があちこちで点滅しているように見えて、美しい。海沿いをバイクで走り抜けるときの水面の輝きに似ていると思った。
 光の揺らめきを目で追っていると、気が逸れて、少しだけ楽になった気がした。琥一は彼女の体を支えながら、じっと窓の外を見つめた。

 しかし、いくばくか経ったところで、彼女が琥一の体を突いた。
 どうしたのかと琥一が視線を落とすと、彼女は不安そうな面差しで琥一を見上げていた。
「どうしたよ?」
 電車の走音がうるさいので、彼女の声を聞き取りやすいように、琥一は少しばかり背を屈めた。
「疲れたか?立ちっぱなしだからな。この線はずっとこんな感じだ。……辛いなら、俺の体に寄りかかってろ」
 彼女に寄りかかられたら、琥一の方が辛くなるのは目に見えているが、電車通学に慣れない彼女に、いきなり満員電車で1時間半立ちっぱなしを強制するというのも可哀相な話だ。そうでなくても彼女は低血圧な上に貧血気味だというのに。
「ううん、大丈夫」、彼女は微笑んだ。
「でも、確かにちょっと疲れてきたかな……。コウちゃん、お言葉に甘えてもいい?」
「あぁ」
 琥一の返答を聞いて、彼女は額を琥一の体に預けた。琥一の胸筋のあたりに温かい熱が広がる。
「うわあ、らくちんだ」
 彼女は、ふふっと言って笑った。そして車両が込んでいるのをいいことに、彼女はそうっと両腕を琥一の腰回りに回した。琥一の体はふるりとわなないた。
「……オイ、何してる」
 あんまりくっつかれると、一時的に収まったはずの欲求が、再び頭をもたげてくる。
 彼女を欲しいと思う欲望は、油性の汚れに似ている。根こそぎ取り除いてやらなければ、指の腹で擦ってごまかそうとしても何とかできるものではない。
 琥一はもう少し深めに背中を曲げ、周囲の人間に聞こえないよう、彼女に耳打ちした。
「さすがにこんなところでベタベタするのはまずいべ」
「大丈夫」、彼女はもう一度ふふっと笑った。
「コウちゃんのジャケットの中に手を回してるんだもん。他の人からは見えないよ」
「ったく……」
 琥一は大きく息をついた。
 傍から見れば、どこからどう見てもバカップルにしか映らないに違いない。
 幸か不幸か、はばたき市を通過する列車の中は、周囲に気を払っていない人ばかりであるが。
 座席に腰を下ろしているのは大半がサラリーマンで、寝ているか携帯電話あるいは携帯ゲーム機を弄っているか、もしくは新聞や雑誌を眺めていた。
 立っている人間も中吊りを見ていたり、イヤホンやヘッドフォンを装着して音楽を聞いたりしている。
 背の高い琥一は周囲から頭一つ出ているけれども、琥一の五分の四くらいしかない彼女の体は人ごみに埋もれている。
 緊張感のない彼女に呆れつつ、けれども彼女に甘えられるのは嫌じゃなくて、琥一は彼女の腰を抱き寄せた。
 ちょっと彼女を驚かしてやるつもりで、琥一は彼女の耳元でククッと笑いを噛み殺した。
「オマエ、周りに見えてないと思ってたら大間違いだぞ。こういう公共の場ではな、大体、周囲を見ないように気ィ使ってるだけだ」
「そ、そうなの!?」
 琥一の思惑通り、彼女は驚いて目を見開いた。
「や、やだ、ごめんね……。そうとは思わなくって」
 彼女が申し訳なさそうに琥一を見上げた瞬間、再び車体が揺れた。
「きゃっ」と彼女は悲鳴を上げて、傾れ込むようにして琥一にしがみついた。
 彼女の柔らかい胸が琥一の鳩尾あたりに密着する。列車の動きに合わせて、彼女の胸は琥一の体に押し付けられるように蠢いた。
 むにむにとした柔らかい感触に、琥一の脊髄には稲妻を受けたかのような戦慄が迸った。
 反射的に、彼女の体を支えていた琥一の手が彼女の臀部へと動く。
 琥一の大きな手で、プリーツスカートの上からヒップを撫でられ、彼女は声にならない声で「ひぁっ」と呻いた。
「ちょっ……、こ、コウちゃん!」
 めっ、と、彼女は琥一を叱りつけるように眉をひそめた。だが琥一の体から逃れようと彼女がもがくたび、彼女の胸はゆさゆさと揺れ動き、琥一の腹部に擦りつけられる。
 思わず導火線に火を点けられた感じだった。くっついた体勢のままであるなら少しくらい手を動かしても変わらないだろうという思いが、理性に雁字搦めにされていたはずの琥一の情動を突き動かした。
「うるせェな。嘘だよ」
「う、嘘?」
「脅かしてやろうと思っただけだ。オマエがあんまりくっつきたがるからよ」
「ひ、酷い……」
 酷いと言いつつも、彼女はホッとしたようだった。抵抗をやめ、琥一の体に密着したまま、「いいんだもん」と照れながら口を尖らせた。
「ひっつきもっつき。登校する時電車に乗ることなんて滅多にないし、ちょっとくらい、ダメ?」
「ちょっとだけならな」
 琥一は彼女のスカートの中に手を入れた。ひんやりとしたサテン地の下着が琥一の手に触れる。琥一は下着の上から、彼女のヒップをゆっくり撫でまわした。
「っ……」
 彼女は、声こそ懸命に押し殺していたが、彼女の体は微かに震えた。琥一の愛撫に体が反応するのか、腰も次第にもぞもぞとし出した。
 人ごみで手元が見えないのをいいことに、琥一は彼女のヒップの内側の下着の端から、中指を滑り込ませた。
 彼女がビクッと背筋を伸ばした。大体想像はついていたが、彼女の下着の内側は熱っぽく湿っていた。
 琥一は何も言わずに、中指を彼女のクレバスに沿って動かした。たっぷりと溢れた蜜は琥一の指を濡らし、潤滑油を受けて琥一の指はいよいよ滑らかに前後した。
「……っぅ!」
 彼女もこれ以上はさすがにダメだと思ったのか、首を左右に振った。
 いつものようにただスキンシップをしていたつもりが、淫らな蜜を見つけられて、動揺しているのかもしれない。
 だが琥一の呼びかけに応じて熱を帯びる足の付け根は、自分一人ではいかんともしがたいのだろう。彼女は抵抗の意を示しながらも、琥一の体を跳ね飛ばすことはしなかった。
 その内、クレバスをなぞるだけでは物足りなくなって、琥一は中指の腹で彼女の秘所を弄っていった。分厚い唇に似た柔らかい花弁、物欲しそうに凝り固まっている瑞々しい花芽、二つの窪みを繋ぐ弱々しい皮膚の架け橋、それらを彼女自身の蜜で塗りつけるようにして擦ってゆく。
 彼女は尚も声を噛み殺して、琥一の指の動きに耐えた。
 琥一の背中にしがみつく彼女の力は、いつの間にか強くなっていた。
 とろとろと落ち続ける蜜を生み出す源に焦がれて、琥一は彼女の前方の窪みに中指を割り込ませた。第一関節のあたりまで差しこんで、上下に微振動させた。
 彼女は、あっと声を出しそうになったが、歯を食いしばって堪えた。

 電車の中で一体何をやっているんだろう、と、呆れ返るだけの理性はまだ残っていた。
 自分が言った言葉ではないが、男にしがみついて艶めかしい表情をしている女子がいれば、敏い大人であればすぐさま気づくだろう。
 誰も注意してこないのは、気づいていないというよりは、図体が大きく、強面をしている琥一を恐れてのことなのかもしれない。
 だが、列車が駅で止まり、近くにいた乗客の大半が入れ替わったのを確認してしまうと、ここでやめようという気になれなかった。
 奥まで突貫されないため、彼女は琥一の指に飢えていた。
 だが彼女を満たしてやることはなく、琥一は彼女の下着から指を引っこ抜いた。
 どうしてと言わんばかりに、彼女が寂しそうに琥一を見上げる。
 彼女の気が逸れたのを見計らって、琥一はスラックスのジッパーを下ろし、下着の狭間から自身の尤物を取り出した。腰を少し低めに落とし、先程指を割り込ませた要領で、彼女の下着の前方脇から自らを突き入れる。股布の表面で退屈そうに佇んでいた彼女の蜜の上を滑るようにして、琥一の根が彼女の下着の中に収まった。
「……う、うっ」
 自分のものではない異物が下着の中に入り込んできた違和感から逃れようと、彼女が腰を捻った。
 彼女の淫らな花弁が琥一の根を舐め回す。くっ、と、琥一は眉間に皺を寄せて、生温かい誘惑に耐えた。
 猛った自らを思えば、彼女にはあんまり動かないで欲しいところだ。だが、彼女が動くことで、彼女の秘所の形が根を通してダイレクトに伝わってくることに気付いた。
 微妙な凸凹具合、熱を帯びて膨れ上がった花芽、蜜が満ち溢れている窪み。指の先でピンポイントに感じるのもいいが、敏感な根の触感を利用して秘所全体を把握するのも悪くない。
 これまで窪みへの挿入を嫌がったことのない彼女と所謂「素股」に及んだことは一度もない。しかし、列車の中であれば、彼女の腰を持ち上げて上下に動くよりも、彼女の腰を固定させて前後に動いた方が効果的かもしれない。
 琥一は背中を折り曲げたまま、彼女の耳元で囁いた。
「すぐ終わる。じっとしてろ」
「えっ?」
 琥一の言葉の意味が分からなくて、彼女は目を丸くした。
 琥一は彼女の顔を見つめながら、小刻みに腰を動かし始めた。列車の動きに合わせた微妙な振動は、恐らく挿入していたならそれでは物足りなく思われたであろう。けれども互いの興奮が詰まった部分を摩擦させあうことは、それだけでも十分に快楽を呼び起こした。特に、琥一の根元が彼女の敏感な芽を強く擦るものだから、彼女の瞳は次第に熱気でとろけてきた。
「なんて顔してんだ、オイ」
 琥一は意地悪く笑った。
「まだ入れてねぇだろうが」
「や、やだ……」
 彼女は、恨めしそうに琥一をねめつけた。
「そういうこと言わないで!おっ、怒るよ!?」
「そんな顔で言っても、説得力ねぇぞ」
 琥一の腰が規則正しいリズムで彼女に打ち付けられる。
 琥一の根は彼女を欲して、硬く、熱く滾っていた。彼女もその仕組みを既に知っているから、逆らえず、引きずり込まれてしまう。
「うそ。ごめん」
 彼女は小さな声で謝罪した。
 琥一に触れていた手で、彼女は改めて琥一の背中を擦った。そして伏目がちに「なんか変な感じ……」と深息を吐き出した。
「とってもきもちいい……、コウちゃん、熱いね」
「……っ」
 その表情でそんなことを言うのは反則だと思った。
 琥一の感情が弾ける前に、琥一の下半身が轟いた。
 彼女を好きな気持ちが血潮に溶け、激流になって、一斉に琥一の根に注ぎ込まれた。琥一の根は彼女の下着の中で、彼女の窪み目掛けてビクンと跳ね上がった。
「ひぁっ!?」
 彼女は声にならない声を上げた。彼女の体も上下に振れる。
「コ、コウちゃん!いきなりは反則だよ!?」
「ルセェ……。反則はオマエの方だろうが」
 油断すると、数日間お預けを食らっていた根から、欲望の白い欠片が噴出してしまう。琥一は足の付け根に力を入れて、第一の衝迫に耐えた。
 「うっかり出てしまった」というのだけは避けたい。
 彼女の温もり、喘ぎ声、恍惚とした表情、心地よい締め付け感、それら全てがまだ全然足りていない。だが彼女の下の唇から漏れる涎に甘んじたまま、終わりにしたくもなかった。
「少しの間……、耐えろ。すぐ終わる」
 琥一はそう彼女に声を掛けると、腰の動きを速めた。ひらひらとした内側の花弁とたっぷりとした肉厚の外側の花弁、両方が、彼女の下着の縁に引き止められた琥一を、涎いっぱいに咥える。琥一は彼女のヒップを強く掴んだ。自らの根の先端を押し付ける「奥」を彼女のヒップの肉で作り出して、魘されるようにして彼女に腰を叩き付けた。
 彼女は、声も息も、何も漏れ落ちることがないように、必死で口を噤んだ。
 彼女のその表情は、琥一にいけないことを許しているという恥じらいと、欲望に屈した自分を素直に認める潔さが入り混じったものだった。
 彼女を愛しく思う気持ち、とにかく男の性を放出したい本能がごちゃまぜになって、琥一は追い詰められていった。
 程なくして、根の側面が焦げ、弱弱しく震えた。その直後、琥一は押さえ込まれていた精を一気に吐き出した。彼女の蜜とともに、温かいものが彼女の下着の中に溜まってゆく。
「う、んうっ!?」
 明らかに自分のものではない、熱を帯びた液体が下着いっぱいに広がったのを感じて、彼女は瞠目した。
「えっ?えぇっ!?」
 琥一は深呼吸をし、息を整えてから、彼女の下着から自らの根をゆっくりと取り出した。
 と、そこで、緩くなった琥一の根の先端が、彼女の内股に引っかかった。
 弾力性のある彼女の太腿は萎れようとする根を鼓舞した。中に詰まっていた欲求を折角抜き取ったというのに、琥一の根は再び勢いを取り戻した。
「……こりゃ、暫くは収まらねぇな」
 琥一はため息をこぼし、ひとまずスラックスの中に自身を入れ込んだ。
 今日は一日己の暴れん坊将軍に悩まされることになる。それを考えると、憂鬱になった。できることなら、このまま彼女を押し倒して彼女の内側を思う存分堪能したいが、この調子だと一度挿入したくらいでは収まらない可能性も高い。
「コ、コウちゃん、あの……」
 彼女はもじもじしながら、琥一を見上げている。琥一は彼女の頭に手を乗せ、ぽんぽんと軽く叩いた。
「オウ、……悪かったな」
「ううん、それはいいの。わたしもよかったから……。でも……、中が、その……ぐちゃぐちゃです」
「あー……、そりゃそうだろうな」
 彼女の下着の中は、琥一の精液で溢れかえっている。考えずとも分かる。あまり気持ちの良いものではないだろう。
「駅に着いたら、すぐにトイレに行け。そこで、脱いじまえばいい」
「ぬ、脱ぐって……、や、やだよ!今日一日そのままだなんて、そんな、とんでもない!」
「んなこと言っても、一日気持ち悪いのも辛ぇだろうが」
「つ、辛くなんてないもん。だって……コウちゃんのだし。嬉しいもん」
 口を尖らせて、頬を染めた彼女の消え入りそうな声に、琥一は思わず大きく息を吸い込んだ。小鼻が膨らむ。
 ここが自室であったら、即、二戦目に入るところであった。
 気持ちの高ぶりを気付かれないように、琥一は頭を左右に振って、これ見よがしに呆れたふりをした。
 今日はこのまま学校をサボって、彼女をWest Beachに連れ込んでやろうか。琉夏に知られたら冷やかされまくり、祖母に知られたら雷が落ちること請け合いだが、学校に行ったところで、今日は、琥一も彼女も正常に機能しないだろう。

 やがて電車は減速し始め、はばたき駅到着のアナウンスが流れた。
 琥一が彼女を巻き込んで、もう一日追加されるであろう休日に突き進むまで、あと数分のことである。

愛音さんへ
 (2011/3/25 Asa)