家 庭 教 師


「ここの遺伝の組み合わせは、こうですから…、ここは、自然とこうなるでしょう?」
左斜め後ろから囁くような声が、彼女を包み込む。
さっきから、ちっとも勉強に身が入らない。
そんなところで、そんな耳元で、好きな人が柔らかい声で囁いているなら、普通の人なら、絶対にドキドキしてしまって、今一体何の勉強しているかなんてさっぱり分からないだろう。

「もう!聞いてますか?」
少し強い口調で、怒ったふりをして、彼が言う。
彼女は、彼の機嫌をそこねてしまったと思って、慌てて謝ろうと振り返る。
すると振り返った瞬間、彼女に触れたのはいい香りがする唇だった。

彼女にとっては、彼は心優しい家庭教師。
と、同時に彼女に陥落しそうなほど香り立つ香草のような、歓びを与えてくれる男性でもあった…。

一度、二度、三度…。
唇で、軽く触れては離れて、触れては離れる…。
彼はそういう口付けから、彼女を導いていく。

週に一度か二度、彼女は、彼の‐守村桜弥の‐家にやってきて、勉強を教えてもらう。
父親とよく話し合った結果、農学部への進学を希望するにいたった守村であったが、彼がそう決意したと同時に、彼女は医学部への進学を希望した。
昔から、ボランティア活動などには興味があったし、…正直、医学部へ行くことで、彼の心の負担を軽くしてあげたらな、と言う気もあった。
勿論、彼女がそう考えていることは、守村の父親をひどく喜ばせた。
そして彼女に医学書などを今の内から読むように勧めてくれたりする。
そのため、週に一度あるいは二度、守村の家にやってくるのには、医学関連の本を借りたり返したり…。
そういう名目があって、家に来やすかったというのもあった。

「医学部に入るには生物の成績がよくないといけない」というのが守村の父の口癖で、生物があまり得意でない彼女は、生物が得意な守村に勉強を教えてもらう。
…しかし、守村は必ず彼女の斜め後ろに立った。
そして耳元でささやくように、指導を進める。
彼女にとっては、生物どころの話ではない。
目の前に広げられた参考書の「生物」よりも、斜め後ろに立っている「生物」の方がはるかに気にかかった。
彼女の心は、鼓動に満ち、守村のことで頭がいっぱいになってしまうのだ。


「んっ…、ん…。」
軽い口付けから徐々に焦らすように、守村の舌が彼女の口の中へ入ってくる。
いい香りがする…。
何の香りだろう…。
いつも守村からは香草の香りがした。
その香りで、彼女全体を包むように、彼の腕が彼女の腰へと回される。
そして気がつくと、深い口付けを、惜しむように何度も繰り返しているのだった。

「あ、や…。」
守村の手が腰から段々下に下がってくる。
守村は、立ったまま、椅子に座って硬直している彼女の身体を自在に触る。
唇をふさいだまま、守村の手が探る場所は、彼女がすでに湿らせている部分だった。
彼女は、守村と一緒に勉強していると、すぐにそうなってしまう。
とういうのも、耳元でささやかれるように教えられているため、何だかくすぐったいような、むずむずした感じになってしまうのだ。

「あなたは、…いつもこうなんだから…。」
くすっと笑って、守村はその部分を優しく指の裏で撫でた。
守村の少しひんやりした指が、彼女の熱く潤った場所に擦れて、彼女は思わず普段なら出さないような歓声をあげてしまう。
「あっ…いやっ…。」
彼女は恥ずかしさのあまり背中を丸くして、守村の腕にしがみついた。
守村の胸元に顔をおさえつけるように寄せる。
守村の服からも、何かしらのいい香りがする。
どこに触れても、彼女を誘わずにはいない守村の芳しい香り…。
彼女はくらくらする。

「そんなにしがみついていると…、ほら。」
守村の指が、まだ異物を受け入れなれていない彼女の入り口へずるっと入った。
「あ…!!」
彼女は、またしても恥ずかしそうな声を出した。
「…入っちゃいますよ。」
守村はまだ笑っている。
何でだろう、いつもはとても奥手そうで、外では決してこんな顔を見せないのに、二人のとき、特にこうやって彼女を教える立場に立った途端、守村は一気に変貌する。
その守村は、何だか少しミステリアスでニヒルな感じのする男性に見えた。


守村はゆっくりと彼女の中を指でまさぐる。
彼女は、あまりの気持ちよさに、頭が真っ白になって、
守村にしがみつくことしか出来なくなる。
しがみつく彼女の手には、だんだん力がこもってきて、
守村の服の皺が、だんだん粗いものになっていく。

しかし、彼女は知っていた。
自分の一番弱くて好きな場所を、守村は最後まで触らない。
彼女が果てようとするその瞬間まで、決してその部分を触ってはくれないのだ。
そこは、触れられると、それだけで、甘い蜜がふきこぼれる場所…。
果てようとする快感の中で、彼女は二重の快感にいつも身を委ねるのだった。

「うっ…。触って、触ってよ…桜弥くん…。」
彼女は、しぼれるだけ声をしぼりだして、守村に懇願してみる。
それがどれだけ無駄なこととは分かっていようとも、一度知ってしまった禁断の果実のありかを、触れて欲しくて。
そしてそれによって、もっと感じたくて、彼女は上目使いをして頼んでみる。
しかし守村は、すうっと目を細めて笑うだけだ。
相変わらずその場所だけは避けて、指で彼女をまさぐり続ける。
「や、そこじゃない、そこじゃないよぉ…っ。」
彼女は声を微かに張り上げる。
だが守村は、それに対する返事をしないで、ただこう答えただけだった。
「あなたは…少しいやらしすぎる。」


「っん…、は…。」
彼女から深いため息のような声が洩れた。
焦らされて焦らされて、彼女のその部分からこぼれるものは、単に潤っているだけでなく、恐らくもう、守村の指の根元にまで垂れてしまっているだろう。
穏やかな速度で、彼女を快感へと導く守村。
その微妙なバランス感覚に、彼女はもう果てる寸前だった。
すると、まるでその瞬間を待ちわびていたかのように、守村は指の動きを少し早めた。
「あっ、あっ、あぁ…!!!」
彼女の身の悶えようと、入り口の筋肉の弛緩、そして自分の腕へとこめられる力から、彼女の絶頂が近づいたことを守村は悟った。
そして、ついに、禁断の果実へと指を伸ばす。

そのスポットは、彼女の一番…甘いところ。

そして、それを確かめるように触れると、彼女はびくんと大きく身体を震わせた。
守村は彼女の耳元で「可愛い」と消え入るような声で囁く。
「い、いや、今触ったら…。」
「…今触ったら?」
「…もれちゃう……。」
身体をよじりながら、彼女はあえぎ声をあげる。
その姿は限りなく艶めかしく、守村を刺激する。
「洩らせばいい…。見ているのは僕だけです。」
「さ、桜弥くんだから…恥ずかしいんだよぉ…っ。」

守村は再びそのスポットを触る。
彼女は、敏感にそれを感じ取っているのか、守村の指の動きにあわせて、
声にもならない声をあげている。
「恥ずかしいって…、それなら、もうこんなことになってる時点で、
 随分恥ずかしいことになってますよ?」
意地悪く守村はそう言って、彼女のスポットを優しくつつき始めた。
「や、だめ、だめ、桜弥くん、だめぇっ…!!」
彼女が大声をあげるのとともに、守村はその部分すれすれを摩擦した。
彼女は短く嗚咽を上げている。
そして…数秒後、熱い飛沫が、彼女の下着の中へ滑り込んだ守村の手全体へ滴りかかるのだった。

B 「はぁっ、はぁっ、はぁっ…。」
彼女は絶頂を迎えて、顔を真っ赤にしたまま、守村の腕をいまだゆるく握っていた。
守村も、これまでの彼女の悶えようを見て、もうすっかり下半身はできあがってしまっていた。
すぐにでも彼女が欲しい、まるでそう言っているかのように、その部分は熱い溜まり場を作って、上を向きそそり立っている。
守村は、彼女の頭を優しく撫でながら、椅子から彼女を立たせた。
そして勉強机のすぐ後ろにある自分のベッドへと、彼女を押し倒す。

どんな時間も惜しいかのように、彼女の濡れきった下着を乱暴にはぎとって、守村は彼女を後ろに向かせた。
「や、守村くん、後ろは、や…。」
彼女が後方の守村に向かってすがるような目つきで言う。
「守村くんの、大きくて、痛いの…。」
首を横にふるふると振りながら、彼女は四つんばいの姿から元の体勢へ戻ろうとする。
しかし、守村はそれを許さない。
「後ろからの方が…あなたの奥まで入ることが出来るんですよ…。」
そう言って、すっかり出来上がった自分をゆっくりと取り出した。

彼女の視線の焦点がそれにあてられる。
守村のそれは、太くて、大きくて、とても硬い。
その感覚をよく覚えている彼女は、それがどれだけ自分を刺激するか知っている。
彼女の入り口からは、再び先ほどまで垂れていた蜜がたらりと垂れ始める。
守村はそれを覗き込むように見て笑った。
「やっぱり…いやらしいなあ、あなたは…。
 僕を見ただけでそうなっちゃんだから…。
 …欲しいんですか?」
彼女は、おやつを待ちきれない子供のように、「うん」と小さく首を縦に振った。
守村はそれを見て「なら」と言いつつ、彼女の腰をしっかり持った。

ぐっ。
彼女の中へ守村は一気に挿入した。
潤った彼女のその部分と、守村の溜まり場の液体は、お互いの結合へ向けて、するすると道を開いていく。
「あああんっっ…!!!」
彼女の長い嗚咽が部屋中に広がる。
その声は、どこまでも守村を彼女へと誘う甘いしるし…。
守村はぐいぐいと締め付けてくる彼女を、おしのけるように腰を進めた。
奥の方へ当たった感触がする。
大きくて長い守村のそれも、漸く根元まで姿を隠した。
見えるのは、彼女との結合部分だけだ。

守村はそれを見るのが好きだった。
自分が出し入れすると、その結合部分からは小さな飛沫が飛び散る。
雨上がりの水溜りへ思いっきり足を踏み込んだときのような飛沫。
それはとても艶めかしい。

「動きますよ…。」
そう言って、守村はずるずるとゆっくり腰を前後にふり始めた。
飛沫がちゅっちゅっと音を上げながら、守村の腹にまで飛んでくる。
守村は満足そうに笑った。
そして、自分の大きさに追いつけない彼女の内部をおし広げるかのように、自分のそれで、彼女を刺激し続ける。
「ああっ、ああっ、いや、そんな動き方しちゃ…。」
「本当は好きなくせに…。
 だって、僕の根元にまで、あなたの液体が、たっぷりこぼれてきちゃってる…。」
「い、いやあっ…。」
「嫌なんですか?じゃあ…。」
彼女は、はっとしたが、もう遅かった。
守村は、すでに彼を受け入れたことで、滑らかに彼を動かすことの出来る彼女の内肉をさするかのように、律動を早め始めた。
ぱんぱんっと音をたてながら、彼女との結合部分へ向かって、腰を動かす。
「やっ…やっ、や…!!!」
あまりの気持ちよさに、彼女は腰だけ浮かせたまま、
頭はすっかりシーツへうずめてしまうかのようになっていた。


「あ、もう、だめ…!!もうあたし…!!」
彼女の絶頂寸前の叫びに、守村もまた、顔をしかめた。
「ぼ、僕ももう行きそうなんです…!!
 …いってもいいですか…!?あなたの中でっ…!!!」
「んっ…!!さ、桜弥くん、来てぇぇっ…!!!」
彼女のその言葉を、まるで聞き届けたかのように、守村の大きなそれからは熱い液体がほとばしった。
彼女は、多量にあふれたそれが、自分の液体と交じり合うのを感じながら、静かな水面へと心を沈めて行った…。





彼女にとっては、彼は心優しい家庭教師。
どの科目においても丁寧に教えてくれる、とっても優秀な家庭教師。
と、同時に彼女に陥落しそうなほど香り立つ香草のような、歓びを与えてくれる男性でもある。
心中の情熱を示すかのような、その燃え上がる秘め事は、彼女をいつもとても喜ばせてくれる…。
彼は、彼女に全てを教えてくれる家庭教師だ。