中学三年生は忙しい。 高等部にそのまま進学できる学校でも、連続的に行われる模試から逃れる術などは、あるはずもない。 折角のクリスマスイブとクリスマスの日も、氷帝学園では、その年最後の模試が行われることが既に決定していた。 今年も跡部の家で開かれるパーティーに行きたかったなぁと思うけれど、次の日にも模試を控えている身で、そんなものに出席するなどと、は言うことが出来なかった。 同じく模試を受ける跡部だって24日も25日も登校するので、それで我慢するしかない。 世の中には、の母親のように、スイスと日本、遠く離れているがために、一番大切な人と一緒にクリスマスを過ごせないカップルだっているのだ。 でも。 (やっぱり、クリスマスなんだし、ちょっとは、ね?) ふふ、とは一人で口元に笑みを浮かべる。 白い吐息が、口元に手を当てたのカシミヤの手袋を包むように、ふわっと広がった。 の後ろには、けだるそうに瞳をしばたいている跡部。 さすがに頭のいい跡部でも、一日模試が続いたことに疲れているようだった。 色素の薄めの瞳に、いささか疲労がにじみ出ている。 24日、その日最後の国語の模試を終えて、は跡部を連れて、自分の家へと向かっていた。 το δωρον (贈り物) 「さ、どーぞ!」 もう夕暮れが迫るこの時間には、橙色と黒が艶のある交わりを空で連ねている。 跡部は、実は夜間に跡部家で開かれるパーティーに顔見せしないといけないため、そうそう長い間一緒にいられないのだが、に、あらかじめ模試後、家に来るよう言われていたのである。 「あぁ。」 が用意したスリッパに、足を通す。 あまり時間が許されていないにもかかわらず、跡部は、わざわざのために時間を割いて彼女の家までやってきた。 はそれを大感謝しているようだったが、実際は、跡部も単に彼女と過ごしたかっただけだったりする。 「……ところで、お前の母さんはどうしたんだよ。」 跡部は、きょろきょろと周囲を見回す。 家はしんとしている。 彼女の母親はどうしているのか、跡部はそれを気にかけていた。 だがは、けろりとそれに返答を返した。 「えへへー。今日、ママは、国光んとこのおばさまとどこか行ってるよー。 跡部によろしくってさ。」 「……随分と信用されているんだな、俺は。」 「ん?」 「いや。」 確かに、跡部との母親は、よく顔も見知っている。 夏休みには、のスイスの実家に麗たちとお邪魔したこともあって、とはある意味家族ぐるみの付き合いだった。 だが、何となく、娘だけがいる家に通されるのも心地が悪い。 こういうところは、跡部の、育ちのよさが影響しているのかもしれなかった。 (………いや、有難いと言えば有難いんだが。) 跡部は、苦笑交じりにの家の廊下を進んだ。 この家は、いつもとても綺麗だ。 の母親の徹底した主婦振りが、垣間見られる。 夕暮れ時、薄暗くなった部屋に次々と灯りを灯していくに続き、跡部も、彼女の部屋へとついていった。 ****** の部屋は、甘い香りが漂う、白を基調とした女性らしい部屋だった。 何度かここには来た事があるが、跡部もここにいると、まるで自分の部屋にいるときのように落ち着く。 「ここで待ってて。」 鞄と防寒具一式を机の上に置いて、が跡部に笑顔を向けた。 「あぁ。」 跡部は小さく頷いて、ぶぉんと暖房の入り始めた部屋に、どっさりと腰を下ろした。 今日、は跡部のためにクリスマスケーキを焼いていたらしい。 模試続きの上に、跡部の家の事情で一緒に過ごせないクリスマスの時間を、ちょっとでも一緒に過ごそうと思ってくれているの健気さが、胸にほんわかと広がる。 彼女の料理の腕、特に菓子作りにおいては、舌の肥えた跡部でも十分に満足させるだけの力があった。 その上、ケーキを食べる間、彼女と二人きりの時間が過ごせるのであれば、跡部にとっては申し分ないことだ―。 の香りが漂う部屋で、跡部は、今日一日模試ですっかり疲れ果てた頭を休めたいかのように、少し伸びた髪をかきあげ、彼女のベッドにもたれかかるように腰を沈めた。 「お待たせ〜!」 それから数分して、は戻ってきた。 どうやらお茶も淹れてきたらしい、真っ白いケーキと、品のいいお茶の陶器の入れ物が跡部の目に入ってきた。 「ちゃんと食えるんだろうな。」 跡部は、ずっしりと座っていた身体を幾分起こし、茶化すようににやりと笑って、に向かった。 「あったりまえでしょ、失礼ね!」 はぷっと頬を一瞬膨らませたがすぐににこやかに顔を戻して、彼女の部屋にある丸テーブルに、ケーキなどが乗っている盆をそっと置いた。 ケーキの甘い香り。 紅茶は、どちらかといえば珈琲派のが好むものである、ダージリンのようだった。 見栄えはとても美味しそうだ。 さすが彼女の手作りだけある。 「へぇ、見た目はいいじゃねぇか。」 フンと鼻を鳴らすと、は、えへへと笑って、丁寧に跡部の目の前に皿を置いた。 「どーぞー。味見してあるから、大丈夫。毒なんて入ってないし。」 照れたような笑顔が愛らしかった。 普段強気で、憎まれ口の多いだが、時折見せるこういう表情がまたたまらない。 跡部は、思いっきり顔の筋肉が緩みそうになるのを必死で堪えつつ、テーブルのケーキに相面した。 そんなふうに、が、ちょっと愛らしい仕草を見せたものだから。 人前で絶対にいちゃつくことを許されない跡部は、衝動的に彼女にぺったりくっつきたくなっていた。 ドキドキした面持ちで自分をじっと見ているの瞳に、いくつもの光が乱射している。 跡部は片手をこまねいた。 「、ちょっと。」 そのまま跡部がケーキを口に運ぶ物だと思っていたらしいは、跡部の予想外の行動に、疑問符をぽん?と頭上に浮かべた。 「何?」 「いいから、ちょっと。」 跡部の口端は相変わらず不遜にあがっていた。 テーブルから天井に向かう紅茶の湯気。 その向こうにいるの、くるくる変わる表情。 まるで万鏡を覗いているようだった。 「なによー。」 一体何の用なのか口にもしないで、ただ軽く手で自分を呼んでいる跡部に、訝しげに顔をしかめて、が、膝で歩み寄ってくる。 制服のスカートが、が歩いてくるたびにゆらゆらと揺れていた。 「わ!!!」 つかまえた。 大声をあげたに、跡部は、ふふんと鼻を鳴らす。 蜘蛛が蝶を糸で絡みとったときのように、それは一瞬の出来事だった。 跡部は、近寄ってきたを、座っていた自分の膝の上に抱きかかえたのだ。 向かい合った彼女の顔を見上げる。 こんにゃろといわんばかりのの顔が、跡部のまん前で、跡部の瞳をじっと見ていた。 「なによー。先にケーキ食べてよー。」 はというと、すぐにそうやってくっつきたがるんだから、と、こういう跡部の調子に、もう慣れっこの様相を見せていた。 それもそうだろう。 日頃禁じられている分、跡部は二人きりになると、すぐににくっついていく習性が普段からあったから。 でも、跡部から言わせると、折角一緒にいられる短い時間、楽しまない理由などない。 模試さえなければ、もっともっと一緒にいられただろうに、中学三年生という身分であるがゆえに、そこは我慢を強いられるところだった。 跡部は、ぎゅっとの腰を抱え、口角をあげたまま、上目でを見上げる。 長い睫毛が黒く彼女の瞳を縁取っている。 こうまで黒と白が似合う女もいない。 そんなことを思いながら。 「食わせてくれ。」 「はぁ?」 跡部の科白に、思いっきりが頓狂な声をあげた。 「いいだろ?二人だけなんだから。折角なんだから、食わせてくれ。」 「……ケーキくらい、一人で食べられないのですか?君は。」 「普通に食べてもつまらねぇだろうが。」 「何、その理屈。」 が、はーと大きなため息をつく。 だが、跡部の強引かつ自己中心的なところには、もう慣れているのか、すぐに、諦めたように「はいはい」といって、くるりと背中を回し、彼女の背中の位置にあった丸テーブルから、ケーキの乗ったお皿を取り上げた。 スレンダーな彼女の腰の柔軟に回る様が、妙に跡部の目を喜ばせる。 跡部は満足そうに笑った。 そして、が皿を手にした瞬間、跡部は、その皿を取りあげた。 「へっ?」 全く何を跡部がしたいのか分からないらしいは、皿を取り上げられたことに、ぽかんとしていた。 真正面から跡部の顔を見ている。 「普通に食べるのは、つまらねぇって言っただろ。」 自分の行動の一つ一つに、思ったとおりの反応を見せてくれるが可笑しくて、跡部は「あぁ?」と声を出しつつ笑う。 「つまんないって…。食べさせて欲しいんでしょ?おこちゃま跡部は。」 てっきり、「あ〜ん」と食べさせて欲しいのだろうと、は思っていたらしい。 跡部が、を抱いていない方の手で器用にケーキをフォークで切っていくのを、不思議そうに見ていた。 「ほれ。」 「へ?」 跡部は、フォークで一口大に切り分けたお手製のケーキを、の口の前に持っていく。 「?あたしの分は、ちゃんとあるよ?」 「いいから、食え。」 全く跡部が何をしようとしているのか分からないといったの顔。 跡部はそれを面白そうに見つめていた。 は、一瞬戸惑いを見せたが、口元まで持ってこられたケーキをそのままにしておくわけにもいかないだろうと思ったらしい。 跡部が望んでいた通り、跡部が差し出したケーキを食べようと、口を半開きにケーキに寄っていった。 そしてぱくりとケーキを口元で軽く捕らえた。 跡部は、その瞬間を、眼光鋭い眼差しで見極める。 それから、彼女がケーキを口にした瞬間を見切り、柔らかい身体をぐいんと彼女の方へ摺り寄せた。 「!!!!」 次に起こった一瞬の出来事に、唖然としたのはだった。 今、が口にしたはずのケーキは、が口にした途端、跡部にそのまま持っていかれたのだ。 跡部は舌をぺろりと出して、ご満悦顔でそれを食す。 「こ、この……!」 どんな跡部のしでかすことにも、大体なれているでさえ、さすがにこう来るとは思わなかったらしい。 顔をかーっと赤らめて、跡部を睨みつけている。 けれども跡部は、のその睨みに全く応じない。 ただにやにやと笑っているだけで、またフォークでケーキを切り分けた。 「ほれ、次。」 「……イヤ。」 「何だよ。」 「どうして、あたしが食べようとした物を跡部に持っていかれなきゃなんないわけ?」 むすっとしているが、まるで今にも噛み付いてきそうな子犬に見える。 跡部はぷっと噴き出した。 「じゃ、食わせてくれよ。」 「だから、食べさせてあげようと思ったのに、跡部がお皿取っちゃったんじゃない!」 は、呆れたように跡部をただ見つめている。 というか、跡部は、阿呆なのか、賢いのかよく分からないとでも思っていそうだった。 跡部は、依然、笑いながら、に顔を近づけた。 「普通に食わせてくれとは誰も言ってないだろうが。」 「はぁ?」 「口移しで食わせてくれ。」 「…………! ば、ば、ば…!」 「バカでも何でもいいから、ほら、早くしろよ。」 けたけたと跡部が笑う。 そのたびに、がのっかっている跡部の膝も微動した。 「今日はクリスマスイブだろ?なぁ、ちゃんよ。」 「こ、こういうときだけ、ちゃん付けして…!」 「なんだよ、ご希望とあらば、何度だって呼んでやるぜ? ちゃん、ちゃあ〜…。」 「も、もういいよ!分かったから!」 慣れない呼ばれ方をしたために、背中がむずがゆくなったらしく、頬に朱色をさしながら、は観念して声をあげた。 ****** ケーキを口先でぱくりと咥えて、それをゆっくりと跡部の口元に持っていく。 緊張しているのか、が瞳の半分まで伏せた睫毛ですら、小刻みに震えている。 跡部はそれを満足げに見たまま、自分の身体を一切動かさないで、が近づいてくるのを待っていた。 ちゅぷり。 唇の触れる音と、ケーキの欠片が渡される音が、重なって甘い音律を奏でる。 跡部がれろっと舌でクリームを舐め取ると、は恥ずかしそうに目をとろんとさせた。 「次。」 跡部がねだる。 は眉を寄せたが、もうそれ以上何もいわない。 黙ったまま、ケーキの小さな欠片を咥えて、それを跡部の口元まで運ぶ。 さっきまで嫌だ嫌だとごねていたのに、はやけに従順に跡部の言うことを聞いていた。 (もっと暴れるかと思ったけどな…。) ただ、は、跡部が組み敷くと、突如大人しくなる習癖があった。 もしかすると、それと同じ道理で、組み敷くに等しい期待をされているのかもしれない。 困った奴だ、と内心思いっきり満面の笑顔を浮かべて、跡部は最後の一欠片を口移しで受け取る。 甘いだけでないケーキは、これまで跡部が食した中で一番美味なものだった。 に全てケーキを食べさせてもらったところで、跡部はの舌まで綺麗に舐めとる。 「ん」と艶のある声が漏れ落ちた。 「………お前、さっきから何興奮してんだ。」 意地悪く跡部は笑った。 自分も、正直、身体が疼いてきているので、あまり他人のことは言えないのだが、ここまで目をとろんとさせて大人しくしているに出くわせるのも、そうそうない。 ここは、その分楽しむのが、相手に対する礼儀というものでもある。 「…そんなことないもん。」 顔を赤らめてうつむく。 そんな彼女の身体を跡部は更にかき抱く。 跡部との体が更に密着したが、はそれも拒まない。 彼女の身体が、制服を通じても、熱くなっているのが分かる気がした。 「……なぁ。」 官能をくすぐられている跡部の声も、いつもより更に色気を帯ぶ。 誘うように、を抱く指一本一本まで、細かく力を入れた。 「…”して”いいか?」 耳元で囁くようにそう言うと、の肩がぴくりと震えた。 電流がぴりぴりっと血管を通じるように、動く体躯。 何度もを抱いているはずだが、いまだの一つ一つの動きに、跡部の欲求も高まり行く一方だった。 「折角のクリスマス…だろ?」 の背骨に沿って、人差し指を、つーっと動かす。 「やっ……っ。」 感度の高いが、弓なりに背をのけぞらせた。 跡部はじぃっとそれを見つめつつ、目の前にあった彼女のネクタイの結び目をくいと咥えた。 ぐっとそれを引っ張る。 ゆるんとゆるくなる臙脂のネクタイ。 服の乱れは、男心を更に煽った。 「っ!!」 困惑気味にが躊躇っているところを、跡部はすかさず、次の行為に移った。 ネクタイが緩められたことでお目見えした一番上のボタンを、同じように唇で器用に外していく。 そしてそこから、服を拭って、の鎖骨へと唇を這わせる。 の肌が熱い。 これは相当にもうキてるな、と思い、跡部は口角をあげた。 きつく肌を吸うと、が歓声をあげる。 頭の上から聞こえてくるの吐息が荒く喘いでいた。 ****** 「な、なんで、こんなの、なの?」 のベッドは、彼女の体躯から香る香りそのままに、甘いフローラルの香りがくゆっていた。 自分のベッドで彼女を抱くのもいいが、彼女の褥に入るのも、違った欲求をそそる。 今、跡部は、両手を合わせさせられたの手首を、ぎゅっと彼女のネクタイで縛り終えたところだった。 シャツだけはだけさせ、跡部の赤い刻印を肌に受けたが、黒い髪をシーツに散らばらせて、潤んだ瞳で跡部を見上げていた。 「したいからだろ?」 跡部は、右手で彼女の髪を丁寧に撫でてやり、それから左手で、制服のスカートの裾から、太ももへ手を差し入れた。 あ、とが震える。 その悶える姿ワンカットワンカットを、跡部はその薄い色素の眼におさめていく。 自分の眼がビデオとして廻っていたらどれほどいいだろうと思うくらい、跡部の眼前のは、いい表情をしていた。 「クリスマスのプレゼントは、赤と緑のリボンがされているのが定石なんだ。 緑はないが、まぁいいだろう。 臙脂の赤だけでも俺は十分だ。 プレゼントの中身がちゃんとあればな。」 顔を寄せて跡部は笑みの眉を開く。 を見下ろす跡部の髪が、の額にふぁさりと触れた。 跡部が言っていることの意味が、ネクタイをリボンに、自分を贈答品に見立てていることから生まれているのだ、と理解したらしいは狼狽を見せる。 「なっ……!ちゃ、ちゃんと跡部のプレゼントは用意したってば!」 「あぁ、それももらうけど、今、俺はこっちの方がいいんだ。」 「……っ、よ、欲張り……!」 「何とでも言え。お前に罵られるのはもう慣れた。」 跡部は、くっくっと口を左右横に上げる。 の首筋をぺろりと舐め、内股をまさぐって。 手を進めると、すぐにの足の付け根に着いた。 薄い下着の隙間から、指を覗き込ませるように入れてみると、そこはすでに蜜の溜まり場になっていた。 じっとりとした粘液が、まるでメープルのように跡部の指に絡みつく。 ちょっと指の先を入り口に当てると、それは、がっつくように、跡部の指の先端を吸い込んだ。 「何だよ、緊縛でも、お前も嫌じゃねぇんじゃねぇか。」 耳たぶを甘噛みしつつ、あぁ?と小さく声をこぼすと、指と声で、同時に刺激を与えられたは、紅がかった顔を悶絶に歪めた。 跡部の指を全て咥えこもうとでもしているのか、ひどく涎をたらすその部分。 彼女が感じている、ということが跡部の心に加速の潤滑油を与えた。 「……でも、こんなんで、いいのか? もっと………欲しいものがあるだろ?」 好きな人が、自分の行為と言葉にこれほど愛らしい反応を見せることに、跡部も気づけば息が上がり始めていた。 ずくんずくんと疼く下半身の熱が、の入り口を指で弄くるうちに、ますます高まる。 「なぁ、……。指だけで、いいのか?」 「っや……、ぁ!」 の中につぷりと中指の第二関節まで入れ込む。 の内襞は、跡部を迎え入れると、すぐにそれを離すまいと指にしがみついてきた。 「………さっき、お前にはケーキを食べさせてもらったからな…。 お前が欲しいっていうんなら、俺もやってやってもいいぜ? ………お前が欲しいんなら、の話だがな。」 必死に跡部を包みこむの襞から、指を抜き、それをそのままの顔に持っていく。 目を半開きにして肩で息をしているは、跡部がその中指をの口に滑り込ませると、素直にそれを唇で咥えた。 ちゅぷん、と音をたてて、舌を使い、がそれをしゃぶる。 「………何、舐めるの、想像してんだよ。」 「……別に、そんなつもり……ないよぉ…っ。」 の舌使いが、跡部を慰めてくれるときのそれに似ていたから、跡部は、思わず声を出して笑った。 指をの口内で上下に動かすと、それはそれで、酷くエロティックな絵だった。 両手首を雁字搦めにされたが、長い睫毛を伏せながら、吐息を漏らして自分の指を舌と唇でくわえ込んでいる。 その指が、自分自身だったら。 跡部は、頭に浮かぶ淫らな図に、こくりと唾を飲み込む。 「……もっといいもの舐めさせてやるよ。」 絶える事のないの色っぽい表情に、徐々に跡部の方が楽しむ余裕がなくなっていく。 手首を縛られて自由の利かないを、ぐっと抱き上げ、ぺたりと敷シーツに座らせる体勢にする。 そして跡部は、膝立ち状態になった。 跡部のそれは、の目の前で、もう熱く上向いていた。 「……お前、これ、好きだろ。」 「…うん。」 跡部が言葉を言い終わるや否や、制服を乱して着ているが、それをかぷりと咥えた。 ねっとりとした唾液と、ざらざらした舌の細かい部分が、跡部のそれを熱と潤いで埋め尽くしていく。 「……っは、ぁ!」 あまりの心地よさに、跡部も意図せず声を漏らす。 彼女自身の中に挿入っているみたいだ。 自然と、腰が動いた。 このまま、彼女の口肉を突き上げて、喉に己の液体を流し込みたい衝動に駆られる。 「…っと、べ……。」 大きな跡部のそれを咥えながらも、くぐもった声でが跡部を呼ぶ。 苦しそうな声が、更に跡部の脳神経に響いた。 緊縛された両手で、包み込むように、が跡部の根元を支えて、舌を懸命に動かす。 きちんと固定されたそれは、跡部が動けば動くほど滑らかに、彼女の口に入り込んでいた。 「……っ!」 びくりと跡部の根元が震える。 自分の腰元でが淫らにそんなことをしている絵だけでも、もう十分キツいのに、彼女に舌で攻め立てられると、さすがの跡部ももう我慢できなかった。 くくくっと肌の深い根元から粘液が湧き出そうだ。 このままだと、の口内で果てさせられかねない。 ぐいんと跡部は自身をの口から引き抜く。 の唾液と己の溜まり場に溜まったそれで、跡部の鉄棒は、ぬるぬるとした液体にまみれていた。 (……あぶねぇ…。) 不思議そうに跡部を見上げてくるに、内心を悟られないよう、跡部ははぁはぁと息をついていた。 「………もっと、したいよ…。」 たどたどしい言い方で、が跡部を見上げて懇願するようにそう言った。 その表情だけで、また跡部が必死に堪えなければならないのを、は知らない。 全く、罪作りどころか、大悪人だ。 跡部は、それでも、残っていたわずかな理性で、ふふん、と余裕ぶった笑みを浮かべた。 「…そこで飲ませてやってもいいけどよ。 ………俺は、やっぱり本命の方がいいからな。」 それだけ言って、一度座らせたを、再びベッドに勢いよく押し倒す。 スカートをめくり、ずるりと下着をはがす。 の入り口からこぼれていた蜜が、の下着との間に白の編糸を織り成していて、それは幻想的な美しさがあった。 一時の猶予も待てない跡部は、すぐさま、先端を、ぐりっとの入り口にあてる。 跡部の熱い端っこが、もうそこまできていると悟ったは、「いやぁ…ぁっ」と細く掠れる声をあげた。 「おい、まだ先だけだぞ。」 もう余裕もなかったが、懸命に跡部は顔を作る。 突き上げたくて、突き上げたくて、腰がぴくぴくしていた。 制服姿のままの彼女と交わるのは、これが二度目だ。 何度やっても、好きな恋人を犯しているようで、独特の後ろめたさとそれに伴う興奮がやまない。 それも、今日は、は手首を縛られていて。 なのに喘ぎ姿を恥ずかしげもなく跡部に晒している。 それは、男性の目から見れば、たまらなく刺激的だった。 いつもは慈しむように彼女を抱くのが跡部流なのだが、今日は申し訳ないが、そんな余裕など全く残ってない。 「……っら!」 ぐ、と入る。 アー………っとかすれたの鳴き声。 小刻みに嘶く嬌声は、耳に心地よかった。 の腰に手を添えて、跡部はすぐに律動を始める。 つながっている、その満足感と、色めかしい音をたてて、こすれ合う肌と肌の生み出す熱が酷く気持ちよくて、何も考えられない状態で、ただ自分の硬いもので柔らかいそれを突き立てる。 かき乱すようにの壁を叩くと、は身をよじらせて、歓び声をあげた。 口端から、唾液がわずかに漏れているのが見えて、それがますます跡部を狂わせる。 テニスのときもこんなに我を忘れることはないというほどに、ただ本能の赴くままに、腰を動かす。 組み敷いたが、緊縛の状態のまま、スカートの中を犯されている姿。 聖なる日を迎える夜が近いというのに、酷くその贈り物は神聖さと無縁で。 だが、声をあげて跡部を受け入れ続けるに、跡部は聖母に感じる想いに近い、大きな愛しさを覚えていた。 吐息が絡む。 跡部の大きな手が、の背中を抱え込む。 もっとの声を聞こうと、跡部はの縛られた手首を、ぐいっと彼女の頭上に上げさせて、その状態で彼女を攻め続けた。 ぱし、ぱしっという肌のぶつかる音が、彼女のスカートの中から聞こえる。 その音にあわせて、の鳴き声も高くなったり低くなったり、跡部を楽しませた。 そして、ついに、が、甲高いすすり泣くような声をあげた。 「やぁ………っ、も、だ、めぇ………っ。 っちゃ………!」 同時に、跡部とつながっているの凹部も痙攣し始める。 ひくひくと波打って跡部を締め付けてきた。 そのの声だけで跡部が持っていかれそうになることをは知らないのだろうか。 跡部もすでに限界を越えていて、が最大限に高まるのを待つばかりだったところに、こうされると、たまったものではない。 「……っく!!」 きゅーっとが跡部を締め付けて、波を寄せた。 それに誘われるように、跡部もの最奥に己をぐりぐりと押し付ける。 根元より湧き上がってきた自身の欲望の吹き溜まりがリズムを刻んで放たれた。 どくんどくんと血管を流れる血流のような勢いで、をめがけて進む。 つながった、そう思うと、抱いている彼女が本当に愛しくて、身体だけでなく、心もとろとろに溶けてしまいそうだった。 痙攣が静かな波に変わり、が静かな快楽に落ちようとした頃、漸く跡部は彼女の手首からネクタイを紐解いてやった。 はらりと落ちたネクタイと、シーツの上にぱたりと落ちたの手。 これ以上にない、クリスマスプレゼントだった。 プラウザバックプリーズ <あとがき> ………ごめんなさいです。 何を、鬼畜跡部なんぞ書いておるのか…。 メリークリスマス! メリークリスマス!(そう言って逃げる気らしい) 今回は、ちょっと男性視点でエッチを書いたので、気分悪くされた方おられたらごめんなさいですよ。 でも、一応、跡部祝いなクリスマスを書きたかったので、すみませぬ〜〜。 |