「や、やだぁぁっ。」

絶叫に近い嬌声。
決して女のような高い声ではないのに、どうしてここまでそそられるのだろう。
さらさらと自分の指をすり抜けていく髪を慈しむように撫でて、日吉は、岳人に口づけた。

「…先輩、聞き分け悪すぎ。」

瞳に涙を溜めてこちらを見据えてくる岳人に、意地悪くつぶやいて、彼の双つのお椀を抱えた。
「い、やぁぁ!」
岳人の声が更に高く跳ねた。
跳躍力がすぐれている岳人の筋肉さながらに美しくひくつくその声に、日吉は心底満足そうに笑った。

「今日、何でもしていいって言ったじゃないですか。」

だから。

頂戴。

何度もつながっているその部分を。

今日も俺に。





  だかせて





「い、言ったけどっ…!まさか、いきなりされるなんて、思ってなかったての!」
「何ですか、往生際の悪い。」
「う、うっさい!」

顔を赤らめて、日吉の身体を避けようとする岳人を、ぎゅうと布団に押し付けて、日吉は右手で彼の花芯を弄ぶ。
まだ今日は一度も日吉の愛撫を受けていなかったそこは、日吉に握られた途端、熱と硬度を増した。

「ん、あぁっ……!触るなよぉっ…、早すぎ!」
「じゃ、触りたくなるようなことしないでくださいよ。」
「な、なにが!」
「だって……。」
日吉はぺろりとその握った花芯の先端を舐めた。
日吉の唾液のせいでは決してない、白い蜜が、岳人の先端で濡れていた。
「あぁぁぁぁ、ん!」
「………濡れてる物を舐めたくなるのが、人の心理だと思うんですけどね。」
くっと笑い、更に岳人のそれを日吉はくわえ込んだ。

「や、やぁん!」
日吉がそれを舌と唇で丁寧に口の奥深く含んでいくと、岳人の神経の中心が詰まっているそこも、更に膨張していく。
その根元はすでにぴくぴくと毛細血管が揺れていて、恥ずかしそうに眼を閉じている岳人が、どれほど日吉の愛撫に感じているかを示していた。

だって、先輩がこんなに喜んでるのを見たら、触りたくなるでしょ?

日吉は、岳人には聞こえない心の声でそれだけをつぶやき、一定のリズムで、上下に岳人を摩った。
しゅぷしゅぷと、肌同士がこすれあう音が、静かな部屋に響く。
その感触が気持ちいいのか、岳人は腰をくねらせ、口を半分ほど開く。
「ず、ずる……っ!いっつも…俺ばっか!」
喘ぎ声と泣き声が混ざり合って、空中にきんと鳴る。
はぁはぁとこぼれる吐息と、岳人の腹に滲み始めた汗が、更に日吉の心を煽った。

分かってない。

いやだいやだと言いながら、勃たせて、受け入れて。

それで、俺の心を縛り付けていくんだ。

日吉は、口からちゅぽんと岳人を外した。
ぷるりと、岳人のそれが、天めがけて棒立ちになっている。

突如日吉が離れたことで、岳人はそれまで開いていた瞳をうっすら開いた。
涙で赤く色づいた瞳が、何とも艶めかしい。

「……先輩なんだから、後輩に全部させてればいいんですよ。」

日吉は、岳人の艶かしい様子に、ごくりと唾を飲み込んで、開脚させた。
まだ岳人は抵抗していたが、体格からいって、最近伸び盛りの日吉に岳人は勝てない。
いやいや言いながらも、後部のつながり場所が見えるまでに、日吉に無理やり足を開かされる。

「先輩って、体、本当にしなやかですよね…。
 柔らかいから、凄く、何でもしやすい。」

ぐいと岳人に近寄り、くくっと笑った日吉は、つぷりと耳たぶをかむ。
岳人はそれにぷるっと震えて、日吉の肩に指をかけた。
指も小刻みに揺れている。
これは、拒絶する態度ではなく、日吉を受け入れるための心の準備みたいな、岳人のクセであった。
日吉は、ふっと息をもらす。
「…いやいやって言いながら…、期待しまくりなの、バレバレなんですけど。」

図星を指されたのか、岳人の目が更に潤んだ。
それを見て、日吉はちょっとやりすぎたか、と思う。
とはいえ、後ろめたさとかそういうものが彼の心に生まれたからというわけではなくて、あまり精神的にいじると、つながったときに、すぐに岳人に達せられるから、という理由からなのだが。

ふぅと自分自身を落ち着かせるために息をついて、日吉は岳人を見つめ返す。

「…どうしてほしいの、先輩。
 したいの、したくないの。」
「……したい。」
「なら、いいでしょう、そんな泣き顔しなくても。」

日吉は、もう一度岳人の太ももに手をかけた。
そのとき、岳人の手も日吉に伸びてくる。
そして、そっと日吉の頬に触れた。
ふるふると首を横に振り、恥ずかしそうに岳人は何度もつぶやいた。
「違う。違う、違うんだっての。」
「?」
「………俺、いつもしてもらってばっかりだから、俺がしたいの。」
目をうるうるさせながら、それだけを小さく言ったかと思うと、岳人は、一瞬何を言われたかと呆然とした日吉の身体を滑るように下って触れていき、日吉の花芯に触れて、それをくいと口に入れた。

「!!」

日吉は驚いて、岳人を見た。
こんなふうに自分から岳人が誘ってくるなんてことはない。
一体どうしたのか。
けれども、岳人にそれを問おうとも、岳人が幸せそうにそれを咥えているのを見ると、何も言えなくなった。
「こんなのが、いっつも入ってくるんだ……。」
そうつぶやく岳人の目は、夢見がちのうっとりした目つきで。
日吉は、どきりと胸がはじけた。
「日吉の…、すごい……。」
まだまだ慣れていないけれども、岳人の舌づかいは、確実に日吉を攻め立てる。
日吉は、いつもは主導権をその手に握っているのに、今やすっかり息があがっていた。

しかし、このまま岳人の口でいかされるわけにはいかない。
一瞬呆けた日吉は、漸く戻ってきた強靭な精神で、再度口角をあげた。

岳人の口膣に発射したいのを何とか押さえながら、日吉は渾身の力をこめて、岳人を再び押し倒す。
「やぁ」っという微弱な声が、日吉の目の前で震えた。
先ほどまで舐めあげられていた快楽で、はぁはぁと息を切らせながらも、日吉は鋭い目つきで岳人を見下ろした。

こんな、純真な少年のような顔をしながら、自分のを必死に咥えていたのだと思うと、岳人が酷くいやらしい男娼のように思えてくる。

「…もういいでしょう。入れさせてくださいよ、そろそろ。」

そして、日吉は、岳人の返事がまだ返ってこないにもかかわらず、彼の足をぐいっと力任せに開き、そそり立った自分を、彼の入り口に当てた。
日吉を後ろに感じて、岳人がひくっと震える。

「ま、まだ早いよ…!」
「先輩がいけないんです。もっと楽しもうと思ったのに、俺をその気にさせるから。」

日吉は、漸く戻ってきた笑顔を浮かべ、そのまま、岳人を一突き、突く。

「あぁぁぁぁ!」

一人では得られない快楽に、岳人が身をよじらせるのを見ながら、心底嬉しそうに日吉は、もう一突き、岳人に己を打ち込んだ。

されるより、する方がいい。

後輩なんだし、させてほしい。

だって、先輩の歓ぶ顔が、一番好きなんだ。