似てるところとかは、特にないんだけど。

うん、ちょっと無口ではにかみ屋で、眼鏡をかけてるところ?
そこらへんが似てるかもね。

でも、なんていうか、まるで硝子細工を扱うみたいに大事にしてもらってるんだけど、
時々思うことはね、もっとざっくばらんに付き合ってくれてもいいのにな、って。
だってあんなにカッコイイ人に好きって言われると、あたしだってドキドキするもん。
なのに、あたしが気を遣って付き合ってるんじゃないかって思ってるのかなぁ。
それとも、単にあたしに興味がないのかなぁ。
ん?
うん、告白してくれたのは彼の方からだけど。
じゃ、興味がないってことはないのかな?
うん、そうかも。もうすぐ付き合って半年になるんだしね…。

どうしたもんかなー。
こう、あたしからもっとガンガン行かないとダメなのかな?
えーいって押し倒さないと、あたしもいっぱい好きなんだよーって分かってもらえないのかなぁ。
でもね?逆に押し倒すと、ちょっと待てってきそうなんだよね。
そんなこと無理にせぇへんでもええでってきっとめちゃめちゃ真面目な顔で言うんだよー。
ん?…まぁね、そうやって、あたしの方も彼に気を遣ってるのかもしれないよね。
何だか、そうやってお互い気を遣ってばっかりだとよくないとは思ってるんだけど。
よーし、なら、明日、がこーんといっちゃおうかな。
うん、そうそう、明日ね、一緒にあたしの家でDVD見ようねって言ってるの。
イタリアの映画なんだけど。
あたしがスッゴイ好きだよって言って、それを分かってもらえれば、いいだけのことだよね。

うん、アリガトね、じゃ、またどうなったか報告するよ〜。
うん、風邪、あなたもひかないように、ん、じゃ、おやすみ。









忍ぶ恋路







ね。

ん?

この映画、面白い?

……何や?突然?…一緒に見とるんやろ?

だって真面目に見てるから。

…映画って真面目に見るもんちゃうの?

そうだけどー。

何?違うん?

ううん………。

どうしたん?歯切れ悪いなぁ…。つまらんか?この映画。

ううん、そんなことない。

ちょ、待ち。一旦停止するから。
……よし、と。
…ホンマ、どうしたん?…オレと一緒やったらつまらんか?

そんなことないよ!どうして、そんなこと言うかなぁ。

だって、さっきから妙にそわそわしとるやん。……何かオレに言いたいことでもあるん?

な、ないよ、別に!た、ただ……。

ただ?

侑士くん、今日遊びにきてから、ずぅーっと映画の話しかしてないから。

……そうやっけ?

そうだよ!……今日は、何しに来たの?

何って……。ちゃんとこに遊びにきたんやろ?

ちっがーう!そんなこと言いたいんじゃなくって!

?……スマン、何が何だかオレには分からんのやけど………。

…あのね。

うん。

何で、侑士くんて。

うん。

二人っきりなのに。

うん。

……何もしてくれないの?

…………は?

だ、だから!いっつもね、二人っきりでいても、ぜーんぜん、普通だし。

…うん。

あ、あの、あたし、女の子っぽくないかなぁ?

……ちょ、待ち。どうして、そういう結果に行き着くんや?

だってね、そ、その…。ゆ、侑士くん、ちっともあたしの方見ようとしないし…。
あ、あたしに興味、なかったりする?

…待て。告白したのはオレで、ちゃんがええよって言って付き合ってくれとるんやろ?

く、くれてるって…。あたしだって侑士くんが好きだから、一緒にいるんだよ?

………。そ、そら、どうも……。

で、でもね、侑士くん、ちっともね、……その……。

………襲わん、てか?

………………。

…襲ってもええの?

………え、ええのって……。

……イヤやないの?

ど、どうして!

……前の彼氏、思い出したりせぇへんの?

…………。その話は、前も言ったでしょ?もう終わったんだって。

そうやけど。

あたしは今、侑士くんが好きだよ。だ、だから、あたしは侑士くんに触れたいって思うの。
侑士くんの方が、イヤだったりするの?
…あたしが初めてじゃないから?

それは関係ないやろ。そうやって卑屈になるな、ていつも言うとるやろ?

……うん。ごめん…。

…正直に言うてくれな?
ちゃんは、その、オレとでも、したい、思うてくれるんか?

…うん。

………そ、か。

…侑士くん、…照れてる?

そ、そないなことあらへんけど…え、えらい積極的やなぁ、思て。

だってはっきり言わないと、侑士くん、気、遣わんでええでーっていっつも流しちゃうもん。

そんなことないで。

ある。

ない。

ある。

なーい。

あるのー!

だー!ないって言っとるやろ!

あるのー!いっつもそうだもん!ちゃんは何も気にせんでええ、ってそればっかり!
あたしはお姫様扱いされたいわけじゃないの!普通に侑士くんとお付き合いしたいの!

…………。

…な、何でそこで黙るの?それって…、出来ないことなの?

……ちゃんには分からんかもしれんけど……。

…うん。

オレ、……ごっつちゃんが好きやねん。

………う、うん。

だから嫌われたくない。

そんな!嫌ったりしないよ!あたしだって侑士くんのこと、スッゴイ好きだもん!
いっぱいいっぱい好きだよ?

違うんや。質とか、量とか、そういうんじゃなくって。

うん。

………悪い、これ以上うまく言葉にはならん……。

あー、そこで止めるのはダメ!ちゃんと最後まで言ってよ。
気になるから。

…だって無理なんやもん。

無理じゃない。

無理。

無理じゃない。

無理だって。

無理じゃない。

…………無理。

…無理、じゃ、ない……よ。











「…………無理。」
侑士が吐いた言葉と。

「…無理、じゃ、ない……よ。」
がつむいだ言葉。

お互いがすぐに触れそうな距離まで近づいたところで、吐息にふわりと言葉が舞った。



「無理、やろ。」
ちゅっと唇の触れ合う音と共に、侑士が低い声を出した。
「…言えんこともあるんやで。」
口付けなら何度か交わしたことがあるから、
侑士も、ドキドキしながらも、まだそれを平然とすることが出来る。
の唇はぷるんとみずみずしく、
いつもその先まで侑士を誘おうとする、妖しの魅力を持っていた。

唇に一度触れると、もっとその唇に触れたくなる。
欲望とは、どうしてここまで果てしないのか。
侑士は、カーペットの隣で座っていたに、ずいと寄っていく。
右手で支えていた自分の体重が重い。
体を傾斜させてへと崩れそうなのを必死でこらえる。
ちゅ、ちゅっと繰り返されるフレンチキスの音が、
一旦停止されたDVDの作動中の音に混じって、部屋を飾っていた。

「…言って、よ………。」
黒くて長い睫毛が瞬かれる。
その睫毛が縁取るのは、漆黒に蒼を絡めたような美しい瞳。
侑士は、口付けをしているだけでもこうやって艶を見せ付けてくる自分の恋人に、
何度苦しめられてきたことか。
「嫌ったりしないもん…。だから…。」
にわかに下げられた眉尻が、の心の曇りようを侑士に知らせる。
感情表現の豊かなの顔は、山の天気よりも更に変わりやすい。



人を好きになりすぎると、時々怖くなる。
自分が押しつぶされそうなほど、自分を凌駕してくる「愛しく思う」気持ち。
しかしそれはモルヒネよりも快く自分を翻弄する。
どっちが幸せなのか。
過度に人を好きになってしまうのと、人を適度に好きになることと。
何事も過度はよろしくないと、どんな格言も語っているけれども、
実際、にひどく心を奪われるようになってから、侑士はもてあましてしまうくらいの愛情に、
自分自身ですらどうしようもなくなってしまうのをまざまざと感じていたのだった。



れろり。

の舌が、わずかに開けられた侑士の歯の隙間から、侑士の舌を捕らえた。
侑士は、ぞくりと背骨に弱い電流が走るのを感じた。
が自分の肩に手を回して、自分に口付けてくる。
本当は、侑士だって自分の欲望が望むままに彼女をめちゃめちゃにしてしまいたい。
男の欲望が指す羅針盤の針は、女性の体の奥深くに埋められている。
その目指す場所のありかは、まだ経験のない侑士にさえ知れていることだった。

だが、怖かった。
いつもその脅威が自分との間にかすかに漂っている。
自分と彼女の愛情。
天秤にかけると間違いなく自分の方が重く、ずいと地を割り、のめりこんでしまうことだろう。
自分にとって、は絶対的な存在。
彼女がいるからこの世が存在するのだと言っても、今の侑士にはそれは何ら疑うべきことではない。
まるで女神に恋した人間の男のような気分だった。
だから侑士は、に必要以上に触れることを恐れる。
触れることで、彼女が自分の愛情を重く感じてしまうのではないかと、
それだけが自分と彼女の穏やかな空間に悩みの種として地に横たわっているのだった。


「…っん、………ふ、っん…っ。」
の甘い声が侑士の耳に聞こえる。
は、積極的な子だった。
こんな自分にも、は彼女が持たん限りの愛情を知らしめてくれる。
口付けに応じてくれるたびに、逃げ腰の自分には甘い唾液を与えてくれるのだ。

唇が触れるだけで、下半身がすぐに反応する。
つながる唾液だけでなく、もっとつながれる部分があるだろうと、侑士の本能が訴えてくるのだ。
けれどもここで、侑士の理性も、負けるものかとよく効くブレーキをかけてくる。
ダメだ。
彼女を組み敷いて自分の欲望を果たしたとしても、己の重い愛情が彼女にのしかかるだろうし、
それが原因で、いつかが自分の元を去っていってしまいそうな、そんな気がどうにも晴れない。
侑士は彼女の方へ倒れそうな体を、ぐいと起こすべく体に力を入れた。
だが、普段は自分が体を引き離すと物足りなさそうに瞳を見つめてきていただけのは、
今日は、侑士の肩の向こうにまわした手で、逆に侑士の体を引き寄せてきた。

思わずの体に倒れこむ。

自分が引かせた体の力の分だけ、に勢いよくぶつかる。
の吐息が直に侑士の首元をかすっていった。

「ヤダ。」
自分の方へ侑士を引き倒してきたは、
侑士が逃れられないように、肩甲骨の辺りでぐっと侑士の背中を抱え込んだ。
彼女の温かい体温と、露にされている膝の感触が、侑士の神経を更に鋭利にさせていく。
「あ、あたし、侑士くんが欲しいんだもん。
 …好きな人を欲しいって思うのって、変なこと?
 侑士くん、あたしのこと、欲しいとかって思わないの?」
の声が震えている。
年にしては初体験が早い彼女だが、さすがに自分で男を引き倒したことはなかったのだろう。
そこまで自分が彼女を追い詰めているのかと思うと、侑士は心が痛んだ。

したくないわけがない。
彼女の体を自分で貫けたら、どれほど自分は満足できるだろう。
されども、それで終わりではないのだ。
ずっとずっと彼女と一緒にいたいから、侑士は待っていた。
たとえ自分がを思うくらいに、が自分を愛してくれなくとも、
それに並ぶくらい彼女が自分のことを思ってくれるようになったとき、
そのときに初めて彼女に欲望を押し付けても、嫌われることはなくなるだろうと。
実際は加速度的に愛情が高まる自分と、のほほんと自分を好きだと言ってくれるとでは、
明らかな温度差を感じずにはいられなかったのだが。



このまま何もしないでいると、はどう思うだろう。
彼女は、失恋した経験から、自分に自信を持てないところがあった。
「まだその時期じゃない」とどれほど侑士が言ったところで、
それを正しく解釈してくれるということはないだろう。
けれども、ここで、結ばれたとしても。
が自分の愛情を重く思ったりしない、という保証はない。
侑士はポーカーフェイスの奥で、苦悶に苦悶を重ねた。

が、侑士にすがりつくように体を密着させる。
侑士はふぅと息をついた。

「……そら、正直言うと、したくてしたくてたまらんけど……。オレ……。」
侑士は、彼女の瞳の力に根負けしたかのようにほろりと言葉をこぼした。
そしてその言葉の後ろに、自分の不安を続けて話そうとしたところ、がそれを遮った。

「なら、して。…めちゃくちゃに……してよ。」

ぎゅうっと抱きついてくるの甘い香りと、生ぬるい触感と、
視覚を刺激する白い首に、彼女の言葉、その上、舌に残る彼女の唾液。
全て五感をに支配されて、侑士は、自分のこだわりと彼女への憧憬に揺らいでいた。

「ええの?」

めちゃめちゃにしても。

一度突進すると、それを止めることなどできない。
自信もない。
ゼロか一か。
それが男の欲望というものだ。

「…ほんっとーにめちゃめちゃにしてまうで。
 きっと……、ちゃんの体が壊れてしまうくらい。」
耳元で侑士に囁かれたことで、それだけでが背中をわずかに震えさせた。
感度が高いのだろう。
侑士は自分の心の奥にある好奇心が、蠢いているのを脳で悟る。
「いいの……、壊して。」

歪んだ欲望。

純粋すぎて、いびつになってしまった愛情。

侑士は慄いているのか震えが止まらない手で、の髪をさらりとかきあげた。
健康的な肌が、侑士の前に露にされた。
ちゅうっと首元に吸い付くと、は「ぁ、ん!」と愛らしい嗚咽をあげた。
永遠にその首に吸い付いていてもいい。
彼女の肌が赤黒く内出血するまでに、侑士は彼女の首元に自分の愛情を主張したかった。
「…可愛ぇ声、出すんやな。」
その声で、自分を殺すのか。
人間として世間で通ってきた「忍足侑士」を破壊しつくして、自分をただ純粋な雄に変えてしまうのか。
「…後悔しなや。」
本当にどうなっても知らない。
彼女を求めて、強く勢いよく目的地を示し続ける自分の羅針盤の針は、
もう方向を変えようとはしていなかった。
「しないもん。」
が、ちょっと拗ねたように返事をする。
小さな高めの声が、空気に触れて微動した。

侑士は彼女の首元を唇で愛撫しつつ、の足を割って、彼女のスカートの中に手を進めていった。
の肌は滑らかで、侑士の触れていく部分から熱を帯びていった。
足の付け根。
ひどく温度を高めているその部分が、侑士の心をそそった。
彼女が言葉だけでなく、本心から自分を求めてくれているのだと思えたからかもしれない。

経験のない自分には、この先どうすればいいのか、あまりよく分かっていなかったが、
だが、の声のトーンが微妙に変わるところを、侑士は丁寧に愛撫していく。
手を服に滑り込ませて、上半身と下半身を同時に愛撫してやると、の体温は上昇していった。
「や…、ん…っ。」
にじむように汗がの体に浮かぶ。
その汗を絡めて、尚、侑士はの肌を遊んだ。

すでに自分の男性の先端は、彼女を求めて水の溜まり場を作っているようだった。
それを侑士が自覚したときに、彼の感覚がに伝達でもしたというのか、
の手が、突如侑士のパンツのボタンを外し、彼の肌に触れてくる。

「!!!」
肌がこまかなの手が、侑士の恥ずかしくも固まっている部分に触れた。
手のひら全体で自分を包み込んでくるの手に、侑士はそれだけで持っていかれそうになった。

「イカン…!」
思わず体を硬くする。
自分で慰めるのと、全然違う。
好きな人に触られるのが、これほど羞恥心と官能を呼び起こすなんて。
「…どうして?」
は、体をこわばらせた侑士を刺激しないように声を漏らしたが、変わらず手で侑士を摩っていた。
侑士の先端の液体を混ぜて摩擦するので、いたく滑らかに彼女の手は動いた。
「イカンって…!そんなことされたら、オレ、すぐいってまう…!」
侑士はあまりの気恥ずかしさに、自分とくっついていたから体を起こした。
自分がそれほど早漏だとは思わないけれども、これでも我慢に我慢を重ねてきた身なのだ。

「いっても…いいの、気持ちいいんでしょ?」
敏感な侑士の反応に、は、侑士のそれをジッパーから取り出し、ぺろりと舐める。

「!!」
指とは違う感覚。
いつも口付けてくるの唾液が自分のその部分に絡んでいるのだ。
もう射精寸前といってもいいほど、大きく自身が膨れ上がっている。
だがは手で触るだけでは飽き足らず、あまりの快楽に震えていた侑士の隙を突いて、
侑士のそれをぐいぐいと口に含んでいく。

「あぁぁっ…!」
侑士からは、出たこともないような声がこぼれる。
その部分が熱く硬くなったことは何度でもあるが、とろけると思ったことはなかった。

「…口でするのは初めてなんだ。……痛かったら、言って。」
小さく笑ってそういうと、は、舌と唇で丁寧に侑士を愛撫し始めた。
ラ行の音と、チャ行の音が、艶かしくから奏でられる。
「イカン、イカンって…!」
侑士は、必死にの体をはがそうとしたが、力は一切入らなかった。
このまま、の口の中ででもいい、好きな女の子の前で、自分の雄はその姿を露にしたいようだった。
口でするのは初めてだと言われたことも、侑士の抵抗心をなえさせたのかもしれない。
男性を知っているが「知らない」初めてのこと。
それが自分に許された権利なのだと思うと、ひどく興奮したのは真実だ。

けれども。

もう、液体が管をあがってきていると思った瞬間に、
自分のそれが今どこにあるかを侑士は再び思い出した。
「イカンって…!もう…!」

出してしまう。
彼女を求めて、求めて、求めて尚やまない自分の欲望が噴出してしまう。
しかしは、侑士がダメだと言うと、むしろそれをもっと深く咥えこんだ。

液体だけでなく、彼女に全て吸い尽くされるように、侑士は白濁液をそのままの口の中に出した。
「あ……っ…!!」
の唇は、ぐっと自分のそれを咥えていて、侑士は彼女をそこから引き離さなければと思ったのに、
あまりの気持ちよさに、彼女に包まれて自失しそうになってしまっていた。
あふれてあふれてあふれていく。
今までこんな量が出たこともないというほど、侑士からは、白濁液が流れ出ていた。





「す、すまん…。」

侑士は罪悪感に駆られながら、自分の腰元にいるを見た。
とろんとした目つきのは、まだ自分を口に咥えていた。
そして、喉をごくりと動かしたかと思うと、それから暫くして、漸く侑士から口を引き剥がした。

「……苦いね、ちょっと。」
「!!」
どうやら飲んでしまったらしい。
は苦笑していたが、しかしあれだけの量を出したというのに、
彼女の唇からは、侑士の白濁液は全く見えなかった。
これは、もしや。
「の、飲んだん?全部…。」
「?うん。」
「うんって!あ、あんなん、飲むもんやないやろ…!」
「いいの。」
「いいの、やなくって。」
「いいの、侑士くんが気持ちよくなってくれれば、それで。」
は朗らかににっこり笑った。


そ、そら、確かに気持ちはよかったけど…!

自分でするよりよっぽど気持ちよかったその行為に、侑士の心は弾んでいたけれども。

「でも、オレだけやん、いったの。…それって。」
「いいの。」
「いや、よくないやろ。」
「いいんだよぉ、侑士くんが気持ちよさそうなの見て、あたしは満足だもん。」
「嘘付け。」
「嘘じゃないよ。」

頑固に、自分はいいからと言い張るに業を煮やした侑士は、
今度はいささか強引に彼女を組み敷いた。
そして彼女の足を開脚させ、温度を著しく上昇させているその部分に触れる。
熱かった。
「ん、ぁ!」
「…嘘やん。」
がもらした吐息に、侑士は困惑げに笑った。

自分だけ快楽に達して、侑士が満足するはずはない。
侑士は彼女が自分を咥えていたように、彼女の下着をはがし、スカートをめくってそこに顔をうずめた。
「や、や、何?」
「えぇから。」
自分だってもっと彼女に色々としてやりたかったのに、その前ににいかされてしまった。
これは、侑士のプライドに関わることだった。
が舌で自分を撫でたように、侑士も舌をそっと出す。
ぺろりとの凹部分に触れると、は、「ひゃ」っと甘美な声をこぼした。
すっかり潤ってしまっているそこは、
が先ほどまで侑士に奉仕していた身なのだということを忘れさせるほど、の体を蝕んでいた。

「…ちゃんもしたかったんやな。スマンな。」
侑士は、愛しそうに彼女のその部分を舌でなぞる。
上唇とざらざらした舌でそこを触れると、の体は鋭敏に反応した。
「ん、やぁ…っん!」
次々にあふれてくるの滝。
男と違って、一回に放出する量は少ないけれども、脈々と流れてくるそれは、久遠の香りがした。


何度も何度も舐めるのに、のその部分は乾くことがない。

彼女がいやらしいのか、それとも、自分を本当に求めてくれているのか。
自分だけが、彼女に過度の愛情を注ぎすぎていると思うことは変わりないけれど、
それでも侑士は満足だった。

彼女の淫らに開かれた足と、こぼれてくる蜜で、侑士の下半身は再びそそり立っていた。
一度外れたタグはもう戻ることはない。

侑士は、彼女のスカートにうずめていた顔を出して、を見据えた。
は息を荒げて、侑士をとろんとした瞳で見つめていた。
侑士ははやる心を決めて、彼女に心を告げる。


「…オレ、ちゃんの中に本当は入りたい。…いれてもエエか。」

「うん…。」
は微笑った。
侑士は何故かほっとした。
受け入れてもらえるということは、どんなことであれ安堵の源だ。
そしての手に誘導されるように、侑士のそれはの中にうずもれていく。



「んぁ、あぁ…!!」
ずぷりという音がした。
の口とは違う、の体の中は、違う温度で侑士を包み込んできた。

さっきの口で達せさせられたばかりなのに、自分はまた固く熱くを求めている。
「う、動いてエエか?」
入れただけでもすごくよいのだが、もっと触れ合ってこすれあいたかった。
「う、うん…!もっと、欲しい…!」
彼女の喘ぐ声の艶かしいこと。
が侑士の背中をぎゅうっとつかむ。
爪が食い込んでぎりっと背に痛みが走ったが、
それよりも目の前の転がる快楽の方が、侑士には心地よかった。
「もっと!……侑士くん、もっと!」
うなされるようにが自分を呼ぶ。
自分が焦がれているのと同じようにうなされるの嗚咽を聞いて、
侑士は愛情がほとばしるのを止められなかった。
けだるい感覚がまだ残っている腰を、の中にずいずいと進めていく。
ぐるりと包まれる自分のそれが、に抱かれて、侑士を絶頂にと導いていく。

…!」
侑士もを呼ぶ。
襞が絡み付いて、侑士の下半身がの体に食いつかれていた。
白の爆発。
これまで彼女におぼれることを躊躇っていたのが、むしろ愚かにも思えた。
それほどの体は、侑士を虜にする。



決して忘れない。

漸く手に入れたの体に、初めて挑んだにもかかわらず二度も自分を差し込んだことを。

何度差し込んでも愛情が消えることのない自分の欲望は、まだくすぶることを知らない。